焼印アルファベット

アルファベットの組焼印を36ポイントの大きさで製作することになりました。原型から、一度に26文字分を削り出してゴム型をとる方法で少量の量産体制を整えることにしました。

アルファベット焼印の構図とデザイン

手元にある切削用のモデリングワックスを彫り原型を作りますが、ワックスの大きさが、80ミリ×75ミリなので、それに合わせて切削デザインを作る必要があります。切削に使用する刃物が刃径3ミリのエンドミルと軸径6ミリで先端0.15ミリ、角度10度の文字カッターの2種類で、今回は、焼印の印面の彫の深さを5ミリに設定して、文字のオフセット1ミリの台座を作りますので、その分を考慮して文字間を6ミリあけて配置することにしました。又、36ポイントのアルファベットといっても、文字のバランスをとるために1文字ずつ大きさが微妙に違うので台座部分は26文字の中で一番大きな文字の縦横から1ミリ大きくして作ります。
結構、設定が細かく、切削用デザインを作りデータにするまで時間がかかりました。

アルファベット焼印1
アルファベット焼印のデザイン

上の写真は、イラストレーターで作図した36ポイントアルファベット焼印のデザインです。四角い細い線の枠は間隔を確保するための補助線で、その後削除してからDXFファイルで出力して切削データにします。焼印のデータは通常2.5DのCADデータを使用しますので、イラストレーターのプラグインソフトで2DのCADデータにして、切削ソフトで、平面データに高さ部分をつけてから、切削ソフトのアプリケーションを利用して台座部分のデータを組み込んで完全な切削データにします。

焼印切削用データの作成

イラストレーターで作った2DのDXFファイルを、モデラのソフトに読み込んで補完して完全な切削データにします。

3dd切削データ
焼印用3dengraveデータ

上の写真は、2DのDXFデータをモデラの3d engraveというソフトにインポートしてから、36ポイントの大きさになるように調整し、台座部分(赤い四角部分)を追加して完成させた、アルファベット焼印の切削用データになります。このデータを元にして、赤い台座部分を3ミリのロングエンドミルで10ミリ凸で彫ってから、文字部分を文字カッターで5ミリ彫りアルファベット焼印の蝋型原型を作ります。

焼印ワックス原型とゴム型等

作ったデータを使いモデリングワックスを彫りアルファベット焼印原型をつくります。フェリス社のグリーンWAXを彫り原型を作りますが、モデリングワックスをモデラに付けた文字カッターで削った場合、切削後の削り屑をとる処理が一番大変で、手作業で時間をかけて屑を取り除きながら、ワックス原型の確認もします。

アルファベットワックス原型
アルファベット用のワックス原型

上の写真は、モデラで切削後に削り屑を取り除いたアルファベット焼印用ワックス原型の画像です。正面から撮ると光の反射の関係で上手く撮れないので、斜めから撮りました。普段は、彫った後に加工しやすい用に1個ずつ削るのですが、今回はゴム型を取るための原型なので、ゴム型取りの作業効率を上げるために1枚の台座に複数個彫る形式にしました。

ゴム型取りと蝋型

原型が出来ましたら、複製用のゴム型を作ります。数字の焼印の時には、工業用シリコンゴムでゴム型を取りましたが、今回、工業用ゴムを切らしてしまい、使用期限が近い食品用のシリコンゴムが残っていましたのでそれを使いました。
メタルアートでは、チョコレート用のゴム型の製作もしていますのでその時に使った食品用シリコンゴムのあまりで、シリコンゴムの色が薄い乳白色なので写真に写りにくいのが難点です。

アルファベット焼印ゴム型
アルファベット焼印用複製ゴム型

上の写真は出来上がったアルファベット焼印の複製用ゴム型です。このゴム型に型取用のインジェクションワックスを流し込み蝋型を複製するわけですが、ここからが難しく、ゴム型を熱水に漬けて温めてから、エアーブローで水気を飛ばして、溶かしたインジェクションワックスを流し込み、真空脱泡機で気泡を抜きます。この時、一度目の脱泡作業で溶けたワックスの上に気泡がたまりますので、ガスガーナーでたまった気泡を消して、再度、脱泡という作業を合計3度繰り返します。

アルファベット蝋型
ゴム型よりコピーした蝋型です。

上の写真は出来上がりましたゴム型かた作られた鋳造用の蝋型です。一度に26個分作れるので能率的です。
作った蝋型をツリーという一度に沢山鋳造するロストワックス鋳造法独特な方法を使いまとめて鋳造します。

アルファベット焼印の完成

アルファベット焼印勢ぞろい
アルファベット焼印勢ぞろいの画像

上の写真は、26本のアルファベット焼印をそろえてみた画像です。この焼印は40W用電気ごてに取り付ける為に5ミリの棒にロウ付けしてありますが、一番大変な作業が、26個の印面に26本の棒をロウ付けする作業でした。印面も細かく、棒も細いので、1本1本設定してロウ付けするのに1時間以上もかかりました。写真の色が所処、赤く変色しているのは、ロウ付けするためにバーナーをあてた為に変色した跡です。

アルファベット焼印フルセット
アルファベット焼印フルセットの画像

40Wの電気ごてと並べてみました。40Wの電気ごて(半田ごて)は、小さくて軽いので、(全長22cm、重さ約80g)小さなアルファベットの焼印を定位置に押すには適しています。只、1本押して印面を交換したあと、1分位しないと交換した印面が押せるくらいに温まらないので、能率を考えると、電気ごてを3本位用意して次々に流れ作業をしていった方が効率は良くなると思います。

アルファベット焼印の試し押し

出来上がったアルファベット焼印を木(ベニア板)と厚紙に押して印影を確認します。この作業、1本1本押していくしか方法がないので26本を木と紙に試すにはかなりの時間がかかります。何本かの40W電気ごてを用意して一度にやれば能率的なのですが、40W電気ごては1度通電すると先端のステンレス筒部分が熱で変色してしまい、製品をして再販売できなくなりますので、1本の電気ごてで時間をかけて作業しました。

アルファベット焼印を木へ
アルファベット焼印を木へ押してみました。

上の写真は木製のベニア板にアルファベット焼印を試し押した画像です。写真の撮り方が下手でピンボケしている部分がありますがその点はご了承下さい。
ベニア板の表面と裏面の色が多少違うので、焼印を押した背景の色も違ってきました。1枚づつ写真を並べると枚数が多くなりますので、26枚の写真を1つの画像にして掲載しました。

アルファベット焼印を紙へ
アルファベット焼印を紙へ押した画像

上の写真は、アルファベット焼印を厚紙に押した26枚の画像を1つにまとめた写真です。アルファベットは26文字で完結しますから扱い易いのですが、日本語の場合には、五十音やカタカナ、漢字等があり、とてもまとめて焼印にはできないのが難点だと思います。