焼印を革と木と紙に押す

ボーイスカウト東京連盟様の焼印

ボーイスカウト東京連盟様から焼印のご注文を頂きました。全部で7種類の直火式焼印を製作しましたが、先方からの依頼でその中から6種類提示させて頂きます。どれも高さ30ミリの大きさで、真っすぐな棒の直火式焼印です。本来であれば、印面の彫りを深めに作りたかったのですが、直火式焼印で、デザインが細かく細い線が多かったために、強度を考えて通常の3ミリ彫りで製作しました。

革に押した焼印

出来上がった焼印を革に押してみました。薄いベージュの革の方が焼印の印影がきれいに映るのですが、あいにくちょっと濃いめの茶色の革しかありませんでしたので焼印による黒い焦げとの境がハッキリしない部分があります。

左の丸い焼印は、少し焼印を押したときの温度が高すぎたようで回りが変色してしまいました。直火式の場合、バーナーでの炙り加減により調整しますので、結構難しい場合があります。丸い外枠は太い1本に見えますが、実は2重枠です。上の文字部分は、TOKYO MINATO 16と書かれています。そして中心部にあるのがサソリ座の星座でやや右の主星アンタレスの部分だけ内側を白く抜いた丸枠になっていますがつぶれて黒丸にしか見えません。電気ごて式であればもう少し綺麗に押せたと思いますが、単に私の押し方が下手なせいでもあります。サソリ座の右下にあるのは東京都の形で、下の文字部分はSCORPIOと書かれています。真ん中の写真は東京のビル群と東京タワーでMINATO1という文字を表しています。一番右の写真は、東京タワーが右端にあり、文字数の多いデザインです。いずれの焼印も高さは30ミリで作られていますので、文字数の多いデザインの場合には1文字の大きさはかなり小さくなります。今回試し押しに使った革はこい茶色の上に、柔らかい革で厚さが3ミリと厚めだったので、印面が沈み込みすぎたのも黒くなりすぎた一因です。

左の写真は、十字架のようなクロスの下にM5と17NSJという文字が入っておりその下にある屋根のような部分を敷設したテントだと思います。真ん中の写真は、東京タワーとレンボーブリッジだと思います。その下のMINATOの文字は案外大きいので綺麗に出ています。右端は東京タワーと鳥が描かれていますが、鳥の種類は鷹だと思います。印面の温度が少し高かったせいで鷹の羽の一部が焼けて焼損してしまいました。焼印の場合には黒い部分(凸)の面積が広いと放射熱がたくさん出ますのでその分焦げて変色しやすくなります。この3つの焼印も高さは30ミリになります。

木に押した焼印

今度は、同じ焼印をシナベニヤ板に押してみたいと思います。木は種類にもよりますが、革より低い温度の方が綺麗に焼印が押せます。

革の場合と同じ順番で掲載しました。革の時よりは綺麗に押せていると思いますが、ピントがうまく合わずすみません。一眼レフカメラでないのでマクロ撮影は弱いみたいです。真ん中の写真だけ黄色味がかっているのは、ベニア板の裏側部分に押したためでもあります。3枚とも革よりはハッキリしていますが、革の場合もベージュ色の革であれば木よりも綺麗に押せます。

一番左の写真も革の時とは違い、クロスの縄をかけたようなバッテンまでよく確認できます。右の数字17NSJもどうにか確認できると思います。中央の写真も革の時よりは見やすいのですが、木の方が革より焼け易いので少し焼けが強くなりました。特につり橋のワイヤーとタワーの辺すこし焼けすぎのようです。
右の写真の鳥の部分、革では焼けすぎましたので、意識的に押す時間を短くしようとした結果、黒い部分の多い鳥の部分はうまくできたのですが、左下の部分少し薄くなってしまいました。微妙な調整が上手くできなかった結果です。

紙に押した焼印

最後に厚紙にも押してみました。革、木、紙の中で紙が一番焼けにくく、温度を高くしないと綺麗に押せません。理由は、木は、植物が成長していく時に水を吸い上げる導管と呼ばれる管の部分の水分が抜けて繊維質との隙間が出来るのでその分焼け易いのですが、紙は、漉く事により繊維の密度が高くなるので焼けにくくなります。革はその中間という位置です。

左のサソリの焼印画像も紙が一番よく出ています。一般的に直火式焼印の場合、高めの温度で押す時間を短くする方法には向いているために、焼けにくい紙の場合、綺麗に押しやすくなります。逆に革のような焼け易い素材の場合は、比較的温度の低い電気ごて仕様の焼印の方が押しやすくなります。真ん中の写真の場合は、紙に高温のガスの流れで焼けた部分が出てしまっているので、もう少し印面の温度を下げて押した方がよい例です。色々な種類の焼印を交互に押していますと感覚がつかみにくいのですが、同じ焼印であれば押しているうちに段々感覚をつかみ綺麗に押せるようになってきます。右の写真も少しガスで焼けた跡がついています。本来、印面の彫を深くすればガス焼けの影響は少なくなりますが、今回は、直火式焼印で、細い部分が多い為、強度を保つために深く彫るのを止めました。電気ごて式でしたら、極端な高温にならないので、5ミリ位彫ってガス焼けを防ぐ事ができたと思います。上記の3種類の焼印のうち、サソリの焼印は枠があり、高温のガスが印面内にたまりやすくなるためにガス抜き穴を開けています。

左のクロスの焼印の場合も紙が一番綺麗に押せています。この3種類の素材の中で一番焼けにくいので、印面の周りからの放射熱の影響を受けにくい為です。真ん中の写真には少しガス焼けの跡がありますが、単に印面の温度が高すぎたせいです。(すみません)右の写真は、バランスよく押せていると思います。

最後に一言

今回は、革と木と紙に同じデザインの焼印を押してみて、素材による押し具合の参考になればと思い掲載しました。直火式の場合、炙る時間の微妙な変化が印影に影響しますので、押す人の技量が必要になります。その点、私は、まだまだです。プラスチックに焼印を使用する場合には、材質による変化が顕著で、pp(ポリプロピレン)の場合には、溶けてしまい殆どわからなくなってしまいますが、アクリル板の場合には、綺麗な窪みが出来てハッキリと印影をみる事が出来ます。結構、アナログ的な焼印ですが、技量の差が明確になりますので、練習すれば上達するのも魅力だと思います。 最後に画像を載せるのをご了承頂いたボーイスカウト東京連盟の皆様にお礼申し上げます。