アイス棒への焼印

メールでのお問合せで、イベント用に配布するアイスキャンディーに押す為の焼印をなるべく安くあげたいとの事で問い合わせがありました。通常、アイスキャンディーに焼印を押す場合には、勿論、焼印本体も必要ですが、専用治具と焼印スタンドがないと定位置に綺麗な印影を押すことが出来ません。只、治具やスタンドまで購入となると金額的に予算オーバーになってしまうという事で、色々と打ち合わせをした結果、焼印の製造過程やアイスキャンディーに押している場面を使わせて頂けるという事で、焼印の製作価格(「★1本おまけ」のデザインで大きさが幅30ミリ:焼印価格8,500円+80W用電気ごて替え棒100円、合計税込:9,288円)とアイス棒の購入価格(150円:50本)で焼印を作り、50本にステックに押して納める事になりました。この過程で、イベント用のアイスステック棒があったのですが、改めて専用治具を作り専用棒を送ってもらったりすると費用がかさむという事で、メタルアートがデモ用に持っていた市販のアイスステック治具と市販の棒を使う事で了解してもらいました。

焼印製作とアイス棒に押印まで

アイスの棒に押すデザインは頂戴しましたので最初に焼印作りを初め、その後スタンドの設定と焼印を押す作業にかかりました。

依頼された焼印製作

アイス棒焼印デザイン
アイス棒に押す為の焼印

上の画像は頂戴したアイス棒に押す為の焼印のデザインです。文字だけなので問題はないのですが、アイス棒を固定しておく治具の高さが3ミリありますので、焼印の印面の彫をそれ以上深くしないと焼印台座部分が治具に触れてしまう可能性があり、治具自体が3Dプリンタで作ったABS樹脂なので焼印の印面が触れると溶ける可能性がありますので、印面の台座部分が触れないように彫の深さを6ミリの深彫にして製作します。

焼印原型切削画面
ツールパス前の焼印切削画面

焼印の印面を彫る為のソフトの画面です。この後、ツールパスと呼ばれる切削工具の通るルートを計算してから、鋳造用のモデリングワックスの切削にかかります。そして切削したワックス原型をロストワックス鋳造で真鍮で鋳込んで印面を作り、出来た印面に80W半田ごて用の7ミリの棒をロウ付けして焼印の印面の完成となります。

焼印を押すアイス棒の準備

焼印が出来てから、押す為のアイス棒を購入しました。アイス棒は市内にあるビバホームで市販されているもので、それに合わせた治具もあります。お客様の方に50本のアイス棒に焼印を押して納める必要があるので、念のために50本入りのアイス棒ステックを2袋購入しました。

購入したアイス棒
ビバホームのアイス棒

上の写真は購入したアイス棒です。品名はキャンディー棒9.3cmとなっています。

アイス棒画像
焼印を押すアイス棒画像

アイス棒は、幅9ミリで長さ93ミリあります。焼印に印面の高さが5ミリありますので、上下2ミリづつの余裕しかありません。又、アイス棒、曲がったり歪んでいる物もありますので押す前に選別して出来の悪い棒は除く必要があります。
アイスの中に差し込んで使う為の棒という事で焼印を押す前提で製作されていないので選別する作業も大切になります。

焼印スタンドの準備

続いて焼印スタンドの準備にかかります。治具の装着等につきましては専用治具ページ等で説明していますので必要な場合はそちらをご覧ください。

焼印スタンド画像
準備した焼印スタンド

今回は、お客様に渡す棒材に焼印を押すという事で温度コントローラも使います。普段は、大体の感で、焼印の押し具合を探るのですが、今回は、温度コントローラの目盛の調整をしながらベニア板に試し押しして適温を探しました。出来上がった焼印の試し押しより緊張しますね。
ここで温度コントローラについて少し説明します。コントローラには何種類かあり、いずれも温度自体を調整するのではなく、電圧を調整する事により、半田ごての発熱量を調整して間接的に温度をコントロールします。今回使ったコントローラは、細かな電圧調整が出来るタイプでした。(下の画像のものです。)

温度コントローラ
400Wまで用温度コントローラ

普通、温度コントローラを使う時には、コントローラの調整ダイヤルを中間の位置にして電源を入れて焼印が温まってから5分くらい待って温度が安定してから試し押しをして、焼け具合を確認し、焼けすぎていたら目盛を下げて又5分位待って試し押しをし、焼け方が足りなかったら目盛を上げて5分位待って押すという動作を繰り返して適温になる目盛の位置を探します。この時、押す素材によっても適温のダイヤルが変わりますが、何度か試しているうちに感覚的にわかってくると思います。

焼印スタンド拡大1
焼印スタンド拡大1の画像

上の写真は焼印スタンドの治具部分を拡大したものです。銀色の部分が治具で、スタンドの面板に六角ボルトで固定して使います。黒い部分が凸凹を吸収するための硬質発泡ゴムで今回のアイス棒のように、材料が歪んでいたり曲がっている場合には威力を発揮します。

焼印スタンドにアイス棒を置く
実際に焼印スタンドにアイス棒を載せました。

上の写真は実際にアイス棒を治具にはめ込んで具合を確認している画像です。この時にアイス棒の嵌り具合だけでなく、スタンドのハンドルを下げて棒のどの部分に印面が当たるか確認して、スタンドに取り付けられているX軸、Y軸の微動ハンドルを回して丁度良い位置に焼印の印面があたるように調整しておきます。
この微調整が終わりましたら半田ごてに通電して温めます。一つ注意したい事がり、それは、焼印スタンドに取り付けた半田ごてとスタンドの面板の高さの調整です。面板との高さが高すぎるとその分余分にスタンドの昇降ハンドルを回さないとなりませんし、逆に低すぎると、アイスのステック棒を変える時に印面に手が触れてやけどする危険性があります。私の場合は、半田ごてに取り付けた焼印の印面の下部分からスタンドの面板までの高さを30ミリにして使っています。
個人差がありますので、指定は出来ませんができれば最低30ミリは開けてもらいたいと思います。

焼印をアイス棒に押す。

焼印も温まったので実際に押してみます。普段私は素手で作業していますが、印面に触れてしまうと火傷してしまうので、作業しにくいのですが出来れば軍手をはいた方が良いと思います。

アイス棒の焼印
焼印を実際に押した画像です。

上の写真は実際に焼印を押した時の画像です。今回は、温度コントローラを使い焼印の温度を比較的低めにして押しましたので、焼印を押している時間は、2~3秒と長めにしました。個人の好みもありますので一概に言えませんが、焼印の印面の温度を高めにして素早く押す方法よりも、少し低めの温度にして長く押す方が綺麗に押しやすいと思います。これは、アイス棒の下にある発泡ゴムに力が加わり歪みを補正する時間が長くなる分押しやすくなると思われます。

焼印を押したアイス棒
実際に焼印を押したアイス棒

上の写真は実際にアイス棒に焼印を押した画像です。画像を見てもらうとわかるようにそれぞれ木質が違い、木の色も違いますし、同じ条件でも焼印の焼け具合にバラツキが出てきます。アイスの棒50本に焼印を押すのに大体7~8分位かかったと思います。実際に押して見てわかった事もあります。焼印を押したステック棒を見てみますと焼印の印面の熱で多少歪んでいますので、一度、焼印を押したステック棒の真裏に焼印を押す場合には、印面のデザインによっては綺麗に押せない場合が出てくるかもしれません。そのことを考えると焼印の押し具合だけでなく余分な熱で棒が歪まないように印面の彫を高くする必要があるのでしょう。

アイスの棒に焼印を押している動画をyoutubeにアップロードしましたのでご覧頂ければ幸いです。