焼印を木札に

お祭りの時に使う木札や、お守り用の木札、しいては、願掛けごとに使う絵馬に押す為の焼印も製作しています。一般的に太めの勘亭流や筆文字のような書体を使う事が多く、略字や当て字を使う場合もありますので、文字自体を作る事から始める事が多くなります。焼印の仕様も電気ごて式よりも直火式の方が多いのも、昔から使われ続けてきた事によると思います。

お祭り用木札焼印製作

夏祭りの時期になりますとお祭り用の木札に押す焼印をよく作ります。旧家の家紋を使うデザインが多く、木札の大きさは概ね縦7~8cm、横3~5cm位なのでその中に家紋と太めの書体で書かれた文字が入ると製作するにも、綺麗に押すにも結構、難しい焼印になります。又、家紋の種類は多く、同じような家紋で一部分が少し違うような場合がありますので、最終的な確認は、お客様にしてもらわないとならない為に、納期的に長めになる事もあります。

木札焼印の製作

先日、あるお客様から木札に押す焼印製作を依頼されましたので、その流れを追いながらご説明いたしたいと思います。最初にメールで頂きました画像はラフな手書きのものでした。

手書きの原稿
焼印用の手書き原稿

上の写真が頂戴しました手書きの原稿になります。この原稿から、押す木札の大きさが、幅35ミリ×高さ80ミリだとわかります。 作る焼印は、上の部分の家紋と左下の乱鷹(略字を使っていますが元の字は鷹です。)という部分で鷹の文字は略字を作る事になりました。焼印の大きさですが、本来、幅35ミリですと、25ミリ位の大きさがいいのですが、家紋のデザインが黒い部分の多い焼け易くて押しにくいデザインなので、なるべく大きくした方がよいという事で、30ミリの大きさにしました。家紋と文字部分を1つの焼印として作るか、別々に作るかも相談しました。最終的に決まったデザインは、家紋は上の方に位置し、文字は、左下の位置になりましたので、1本の焼印にするといびつな形の大きな印面になり、形てきに押しにくくなる事と、1本で大きな焼印を作るよりも、家紋と文字部分を2本に分けて作る方が金額的に安くできる事、家紋と文字を分けた方が別々に使う用途が出てくる等の理由で別々に作る事になりました。

左の写真は木札に押す為に作った家紋の焼印を木の板に試し押しした画像です。家紋の中心部分の羽に入った筋が細いので、焼印の印面を熱しすぎると只の黒い塊になってしまうので、なるべく低めの温度で、少し長く押す事が大事になります。丸い枠の内側にガス抜き穴を開けていますがそれでも高温のガスによる変色は防げませんでした。家紋の場合、焼印を作る時も押すときも注意が必要です。
右の写真は文字部分の焼印を木に押した画像です。家紋よりは押しやすいデザインですが、狭い余白部分は熱で変色してしまいます。

深押し用焼印を木札に押す

普通は、なるべく白っぽい木肌の木札に焼印を押して白黒のコントラストで表現しますが、時には、わざと黒っぽい木肌の柔らかく燃えやすい木を使い、直火式焼印を印面の温度を高めにして押し、木を焦がして深い凹を作り押す方法を使う事もあります。「焼印の深押し」といい、電気ごて式の焼印では出来ない、直火式焼印ならではの押し方になります。下のように独特な感じがする木札になります。

左の写真は製作した伝承会という文字の焼印を木に普通に押した画像です。実はこの焼印、「深押し用焼印」として作っていますので、仕様が普通の焼印と違いますが、普通に押すことも出来ます。深押し用の焼印は使う用途により、彫りの深さや台座部分の処理の仕方が違いますが、今回の伝承会の焼印は、8ミリの深彫で印面を作り、台座部分はオフセットゼロにして極限まで余分な部分をカットした印面で作りました。右の写真は深彫り焼印をして押した時の画像です。印面の温度が高い為に木に深くめり込んで凹みを付けます。又、黒い色の木を使うのは周りが熱で変色してしまうので、それをカバーするために黒っぽい木を使います。又、焼印を深押しした後に表面を削って白い木肌を出す事もありますし、深押しした木の凹み部分に黒い漆を入れてから、周りを削り白い木肌を出す工法もあります。同じような使い方をする方法で、金属の板に薄いプラスチックをコーテイングした素材に焼印をあててプラスチック部分を凹ませる工法もあります。