食品機械用の焼印

食品を製造販売しておりますある会社様からの御注文で、ライン化された専用の食品機械(焼印もそのラインの一つです。)で使う為の焼印を作りました。その会社様から最初にご注文を頂いた時には、手作業で焼印を押していらしたので、300W用電気ごてを使い、その電気ごてに合わせた仕様で焼印を作っていましたが、途中から能率的な理由から専門の機械を作る事になりその時に、いままで使っていた300Wの電気ごての仕様に合わせた専用の機械を作りました。残念ながらメタルアートではそのような機械はできませんので、機械が完成したあとに、その機械に合うように何度か仕様変更して今に至ります。

機械に合った焼印の製作

機械が出来上がって最初の時は、300W電気ごて仕様のままで納めましたが、使っている内に色々と問題が出てきて変えていかないとならない部分が出てきました。

焼印の印面製作

焼印のメインとなる印面部分の作り方は、電気ごて式の時も専用の機械になってからもかわりません。只、印面の彫の深さは、6ミリ彫を標準にするようにして(デザイン的な問題で5ミリ位しか彫れない場合もあります。)台座部分も厚めにして製作しています。又、同じデザインの焼印を複数本作るので、ゴム型を取ってコピーできるようにしています。

焼印デザイン
頂戴した焼印デザイン

上の写真は焼印製作用に頂きましたデザインです。この画像よりデータを製作して作りますが、印面が20mm程なので、線の太さを変えないと深く彫ることが出来ない部分が出ますので、20mmで6ミリ彫れるような線幅に調整してからデザインを確認頂き製作にかかります。

焼印製作用デザイン
焼印を作る為のデザイン

上の画像が焼印用に補正したデザインです。印面を6ミリ彫れるように調整して作りました。

焼印の棒部分の仕様

焼印自体は、19ミリの真鍮棒に印面を取り付けて作ります。最初に作ったときは、切ったままの棒材に焼印の印面をロウ付していましたが、焼印自体が重くなることと、熱の伝わり方を良くするために19ミリに真鍮棒に13ミリの穴を棒材の長さより10ミリ短く空けて作る事に仕様が変わりました。

焼印の棒の旋盤加工
旋盤で焼印棒に穴あけ

写真は旋盤で19ミリの棒材に13ミリの穴を開けている様子です。棒材の両面は端面加工して垂直にしてから、センタードリルでセンター決めをして穴あけ加工に入ります。

穴あきの焼印棒
穴を開けた焼印用の心棒

上の写真はセンターに13ミリ穴を開けた300W用19ミリ棒の画像です。心棒に穴を開ける事で熱の回りは格段に良くなりますし、温度センサーを穴の部分に差し込むことによりより正確な温度管理が出来るようになるそうです。

焼印の全長の仕様

今まで焼印の棒をいれた全体の長さについて細かな指定はありませんでしたが。専用の機械を使う事により、一度に幾つもの焼印を機械に取り付けてて使う事になりますので、1本1本の焼印の全長が違うと、印影に影響が出るとの事で、焼印の全長も正確に作る事になりました。実は、焼印の印面部分は鋳造で作りますので、印面の裏側の台座部分は鋳造後平らになっていません。そこで平らにするために削るのですが、この加工をすると、印面ごとに高さが少し違ってきます。今までは、手で押していましたので多少の高さは問題なかったのですが、機械に取り付けてる為に全長を一定(印面の先から棒の後ろまで90.0ミリ)にする必要があり、印面1個1個を計りながら、棒材を旋盤で微調整して長さが90.0ミリになるようにしてからロウ付する事になりました。この手間が結構かかり、一人で仕事をしているのでその分、納期が長くなってしまいました。

焼印全長
焼印の全長画像

上の写真は焼印の印面部分をロウ付けしたあとにノギスで計っている画像です。ノギスの最低感度は0.05ミリですが、ノギスの目盛上は90ミリジャストになるように調整して作っています。焼印の左端部分が変色しているのは、ロウ付するために加熱したことによる変色です。
焼印自体は消耗品なので使っていくうちに印面部分も摩耗します。その摩耗の仕方も機械を使っても一様ではなく、減り方にバラツキが出てくるようで、印影にも影響が出る事があるそうです。只、その辺はメタルアートで対処できませんので、機械に焼印の印面を取り付ける際に、なるべく同じような摩耗のものを選んで取り付けてる以外に方法はないようです。機械を使って大量に焼印を押す作業は思ったよりも焼印の印面部分の摩耗が大きいようで、摩耗した焼印は棒部分も一緒に処分する事になりますので、どうにか棒の部分を残して印面部分だけを変えて使う方法がないかと思案中ですが、印面と棒の部分をしっかりとロウ付けしないと熱の伝わりが悪くなることと、印面部分だけを取り換えるようにしたときに全長の長さの精度の維持がしにくい部分が出てきますので今の時点では、良い方法がないか探っている状態です。

焼印の印面部分
出来上がった焼印印面部分

上の写真は焼印の印面部分をとったものです。ロウ付していますので、全体にくすんだ色をしています。印面の彫が6ミリと深い事と真鍮という材質、デザインを構成する線が細い事により、機械で使うとその分、焼印の寿命が短くなりますが今の所、よい解決法は見つかっていません。